みんなと同じ人生が本当に幸せなの?
毎日毎日の通勤。
たくさんの人が溢れるホーム。
電車が止まりドアが開くと、そこから人がポロポロとこぼれおちてきて、
電車が閉まる合図とともに、私はバッグを胸に抱え、溢れる人の中へ身体をねじ込む。
ドアが閉まれば、わずか数十センチ四方には知らない人たちの顔がたくさん並んでいて、下手に動くことすらできない。
斜め前に立つ女性の後ろ髪が自分の顔に近づくたびに、何とか距離を保とうと足を踏ん張る。
何度もドアが開くたび、数人の乗客が降りて、その倍以上の乗客が乗り込んでくる。
やっとの思いで、空いている吊り輪に指2本引っ掛ける。
座っている人たちは、
下を向いて寝ているかスマホを触っているかの2択しかない。
遅延のアナウンスが流れれば、みんなあたふたと動き出す。
小声で宙に向かって謝りながら遅延の連絡をする人。
スマホから遅延のメールを必死に打つ人。
この毎日毎日の何気ない光景。
たった数分の遅延でさえも、
雇われている人たちは、必死に謝罪の連絡をしなければならないのです。
私はいつからか、この空間に違和感を持ちはじめていました。
まるで、荷馬車に乗ってみんな同じ場所へ出荷されていく牛のような気持ちにさえなっていたのです。
慣れはいつの間にか現状維持になる
これでいいのだろうか。
本当にこの道しかないのだろうか。
車内を見渡すと、たくさんの人たちの目は疲れて死んでいるように見えました。
行きも帰りも。
人はなんでも「慣れる」ように出来ています。
何度も繰り返すことで、嫌でも慣れてしまうのですね。
そして、いつの前にかそこが居心地のいい場所に変わり、今度はそこに留まること(現状維持)を必死で守ろうとしてしまうのです。
なぜなら、現に今「生きられている」という現実があるため、そこが一番安全なところだと思ってしまうからです。
当時の私もいつの間にか、ここが「一番楽なのではないか」と思い込んでいました。
会社を辞めたいと思うことはあっても、いつまで経っても辞めようとはしませんでした。
なぜなら、会社を辞めたいと言いながら、本心は「何だかんだここが一番安全だから辞めたくない」と思っていたからです。
当時の私は、いわゆる社畜のように、毎日朝から終電まで働いていました。
でも、それが普通だと思っていたのです。
なぜなら、私のまわりには同じような人ばかりでした。
もちろん会社に行く電車の中も、私と同じようにこれから会社に向かう人たちばかり。
ドラマや映画に出てくる主人公や脇役も、基本サラリーマン。
ニュース番組も、サラリーマンという働き方を基準にして伝えられます。
自分は世間一般的な働き方で、
何よりみんな一緒なのだから安心だと、心のどこかで思っていました。
毎日8時間働いて、通勤して、週2回休む。
会社で決められた休日に息抜きして、毎月の給料を軸に生きていく。
興味のない仕事でも、合わない人間関係にストレスをためても、
生活のためだけに我慢し、愚痴をこぼしながら働き続ける。
基本は、こんな人生です。
当時の私は、この人生を「一番安心」だと思っていたのです。
みんなと同じが安心という時代は終わった
愚痴を言いながらも、
まだまだ多くの人は『雇われる人生』を選びます。
それは一体なぜでしょうか。
人は本来それぞれ、生き方は千差万別のはずです。
一度きりの人生で、どう生きたいのかはみんな違うはずなのです。
けれど、多くの人は「みんなと同じ」生き方を選択します。
自分の信念や志がない人は、ただまわりに流されてしまうだけになってしまうのです。
みんなが受験するから、自分も受験する。
みんなが就職するから、自分も就職する。
みんなが結婚したから、自分も結婚したい。
みんながマイホームを持ったから、自分もマイホームを持ちたい。
自分の信念や志がない人は、自分で考えるのではなく、まわりと同じことが目標であり、それが安心だと考えます。
しかし、それは本当に幸せでしょうか。
あなたの人生なのに、
なぜまわりと同じ人生を生きることが主軸になっているのでしょうか。
大切なのは、『まわりと同じ』ということではなく、自分の目標や信念を明確にし、自分の人生を『自分らしくどう生きるか』なのです。
もちろん、まわりの影響をまったく受けない人はいません。
あなたの価値観や固定概念も、外部から受けたもので出来ているということを、まず知っておく必要があります。
例えば、夜空を見上げて「今夜は月がきれいだな」と思ったとしますよね。
あなたは、疑うことなく自分から出た感情だと思っているかもしれませんが、実は、小さな頃「ほらみてごらん、月がきれいだよ」とお母さんが言っていたのかもしれません。
絵本に「月はきれい」と描かれてあったのかもしれません。
でも、もし何の影響も受けず、あなたがまっさらな状態で月を見たとしたら「月はきれいだ」と思うのでしょうか。
もしかしたら、夜空に浮かぶ月を見て「奇妙だ、怖い」と思ったとしてもおかしくはありませんよね。
このようにひとつ取っても、あなたが当たり前に考えている価値観や固定概念は、決してあなたが一から作り上げたものではなく、外部からの影響を受けて作られているのです。
だからこそ、あなた自身の価値観や固定概念をまず、振り返ってみることが大切なのかもしれません。
それは、本当にあなたの価値観ですか?
他人の価値観ではないですか?
そして今、世の中は「みんなと同じはいいこと」ではなく「みんな違うからいい」という思考に変わってきています。
『みんなと同じが安心』という時代は、すでに終わりを告げているのです。